大西羊『作文集』

作文を書きます。小説も、書くかもしれません。

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

骨拾い

骨を拾った人 作文をはじめて、いま、もっとも焦っている。ちょうど19時30分なのだが、今日のぶんの作文がまだないからだ。もちろん書く時間はあった。ただ、書いてなかったのだ。やれやれ。どうして書かないのだろう? 僕は、僕自身にそう思う。きっと長い…

気の抜けたろば

ゆれるセイタカアワダチソウ ある日、僕はトラックにはねられた。七、八メートルくらいのトラックだ。つぎに目を覚ましたとき、僕はセイタカアワダチソウになっていた。七、八メートルくらいのセイタカアワダチソウだ。すべてをのみこむまで時間がかかった。…

空の間隙

空について語るまえに 授業にBGMがあってもいいと思う。ルネサンス期の政治情勢について勉強しているときに、音楽があってもいいと思う。それと同じで、作文にBGMがあってもいいと思うのだ。今日はじつに静かな、短い作文だから、チェット・ベイカ―の…

マーチ・ブラウンのスケッチ

マーチ・ブラウン 僕の大学のそばに、マーチ・ブラウンというカフェがある。 大学の厳めしい正門がある。つぎに、ぱたぱたと乾いたまばたきをする信号機がある。そしてキンモクセイの曲がり角があり、うさんくさい(あるいはうさんくさくない)不動産があり…

いかしたクーペ

夏が来た! ずいぶん長い時間のあとに、夏が来た。今年の夏はけっこう遅かった気がする。正確にはどうなんだろう? 去年の夏が早すぎてそう感じているだけかもしれない。去年の京都を襲ったとんでもない暑さがつよく印象として残り続けているだけかもしれな…

迷宮的感情――その②

前回のつづきです 迷宮的感情 僕が大学に入って文章を書きはじめたとき、ムラカミ・ハルキに対しての葛藤はいっそう深くなっていく。 初めて僕が書いた小説は「ロッキー・ラクーン」というものだ。このタイトルはビートルズの曲のひとつで、僕の好きな曲でも…

迷宮的感情――その①

サンシャイン・ラブ的ノーベル賞 みなさんはムラカミ・ハルキという作家をご存知だろうか? きっと、多くの人が知っていると思う。よくノーベル文学賞の候補として槍玉にあげられて、そのままうちすてられてしまうおっさんのことだ。彼は海の夢の一歩手前ま…

蔦家

プーランク・エピローグ たまには短く書いてもいいと思う。昨日、プーランクとかを書いていたらずいぶん長くなってしまったので、バランスをとるという意味でも短く書いてもいいと思う。 僕は大学生なのだが、一般教養科目としてとっていた音楽の授業に魅せ…

筋の通ったこと。はだかの鱒。

*今回の作文は真剣にとらえないでください* でたらめ たまに、でたらめなことを書きたくなる。 いうなれば指の赴くままに文字を連ねてみたくなるのだ。かたかたかたかた…………と。ただ、そういったものは当然ひどく安っぽい。思考なんてほとんどなく、右足を…

だいこんおろし

プーランク・プーランク 僕はその日の作業を終えて、ごろごろとしていた。ずいぶん疲れてもいた。夏の農作業はかなり骨が折れる仕事だ。どの季節もある意味ではうんざりするのだが、やはり暑さというのは耐えようにも耐えられないものである。それに、汗でど…

摩訶不思議放物線

ペーパーバック・ウライター 「Writer」という単語を日本語に起こすとき、僕はウライターとするようにしている。どことなく変な感じもするが、あえてそうしているのだ。そもそも、英語をカタカナで表現するということ自体がきわめて歪な工程であり、多少(あ…

かしこさ

文章を書くこと 文章を書いていて、まともに褒められるほとんどない。なぜ褒められないのか? それは僕の文章がまだまだだからだ。たとえどんな限定的な場所に向けられた文章でも、それが十分に熟練しており、濃密で、面白ければ、必ず褒められる。文章とは…

分点

パープル・レイン 作文を書くのが久々な気がする。実際にそうでもある。作文はおおむね書きだめて予約投稿をしているので、七月十九日の投稿物であっても過去の僕からの声であったりする。しかし、これを書いている僕は七月十九日の僕である。生の僕であり、…

恐怖のソーセージ男

ウィスキー1:スプライト3 大学生とは金の無い生き物である。金の無い生き物は大学生ではないが、大学生とは金の無い生き物である。だから大学生は削らなくてはならない。なにを? 食費を、だ。かつおぶしではない。食費だ。えんぴつではない。食費をがり…

銃の撃ち方(バン・バン)――その②

前回のつづきです。 イーグル・ハンド 前提として、この世界はけっこうタフである。 僕たちはいつもいつでもある種の試練に脅かされている。試練というとちょっと大げさがすぎるかもしれない。選択だ。僕たちはいつも何かを選び取って生活している。そこには…

銃の撃ち方(バン・バン)――その①

銃の撃ち方(バン・バン) このまえ後輩とご飯に行った。僕は後輩とご飯に行くのが好きだ。たくさん彼らから話を引き出し、いっぱいうんうんと頷いて、ポイントを絞って偉そうなことを言う。そういうのは消耗だとも言えるけど、必要な消耗だとも言える。僕は…

眠い

うんざりする とても眠い。すごくそう思う。眠たいことを考えていると、なんだかぐったりしてくる。どうしてわざわざ眠たくならなければいけないんだろう? そう思う。眠らなくてもやっていけるようにしてほしい。あるいは、ずっと眠っていられるようにして…

「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」

「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」 僕は昔からロックが好きだ。じつはジャズのほうがずっと好きなのだが、今回はロックが好きだということにしておく。そっちのほうが書きやすいからだ。ロックなんてべつに好きじゃないよ、っていう人が「スケアリー…

冷たいものがどんどん動きを失っていくように

なるべく早く眠るように 僕は普段なるべく早く眠るようにしている。寝不足は避けなければならないことは、当然だけど重要なことだ。そして、それと同じくらい重要な理由として、夜の陰鬱さにのまれないようにというものがある。 夜の景色を見ているとだんだ…

ウォーク・オン・ザ・ワイルド・サイドと死んだ人

ワイルドとはなにか? そのような問いが世間を席巻していた時代があった。これはおやじギャグではない。韻を踏んでいるのだ。 いま、その時代のことを思い出すと、どうにもくすくすとした笑いがこみあげてくる。どうしてあんなことに必死になっていたんだろ…

僕にとって大切なこと

ジョージアの、コーヒーの、ホットとアイスとレトリバー 僕はあくびをした。みなさんがあくびをするように、あくびをした。それなりに晴れていた朝だった。そろそろ一つ目の授業が始まるころだ。僕は教室に向かう、ことはなく、木詰めの空間でお姉さんを眺め…

グラス一杯分の長さをした激しい雨

さっきまで雨が降っていたのに さっきまで、雨が降っていた。そう、さっきまでだ。いまは降っていない。僕がシャワーを浴びる前、本当にさっきまで降っていたんだ。だけど、こうしているいまは、そこに雨はない。 七月八日、深夜、それは降っていた。降り出…

2\3

2\3 のっぺりとした黒い壁にはそう書かれていた。7upでいっぱいになったアイス・グラスを片手に、それをぼんやり眺めていた。親切にも、手すりは階段の両側についていた。踊り場に差し掛かるところで少し途切れ、直線が定規で引かれたように続き、また少し…

作文の理由。(もしくは、サッポロ・ビールの500ml、エクストラブリューについて)

作文の理由(もしくは、サッポロ・ビールの500ml、エクストラブリュー) その日曜日はとても湿っぽい夜だった。夜の一時が来ると、僕はその湿っぽさの中でごそごそと布団に入った。もちろん、うまく眠れなかった。だからあきらめて、しんとした部屋で考え事を…