大西羊『作文集』

作文を書きます。小説も、書くかもしれません。

気の抜けたろば

ゆれるセイタカアワダチソウ

ある日、僕はトラックにはねられた。七、八メートルくらいのトラックだ。つぎに目を覚ましたとき、僕はセイタカアワダチソウになっていた。七、八メートルくらいのセイタカアワダチソウだ。すべてをのみこむまで時間がかかった。七、八時間くらいだ。その間ずっとライトノベルを読んでいた。七、八冊くらいだ。

つぎに目が覚めたとき、そこは僕の部屋だった。七時か八時くらいのまだ早い時間だった。ただ、そんな時間にあってもエネルギッシュな暑さはお構いなしに僕に降りかかった。布団に横たわりながら、あたまがくらくらした。寝返りを打つと、もっとくらくらした。

夏は暑い。カラスもその黒い喪服を脱ぎだしてしまうほどに暑い。ちなみに喪服を脱いだカラスは白い。みなさんは見たことがあるだろうか? カラスはしょっちゅう(あるいはひっきりなしに)死ぬので、謹んで喪服を着ているのだが、たまの平和の時期にはそれを脱いで、白のままに現れるのだ。

白いカラスはどこかまぬけに見える。ゆれるセイタカアワダチソウのとなりで跳ねていると、さらにまぬけに見える(カラスはセイタカアワダチソウか梅の木の近くで跳ねる)。そして、まぬけなものにはなんだか心を許せる気がする。

写真を載せようとする段になって、僕は迷ってしまった。七、八メートルあるセイタカアワダチソウの写真とまぬけな白いカラスの写真。この内容ではどちらの写真も似合ってしまうではないか。そう思ったわけだ。要素がもっとぎゅっとひとまとまりであれば迷わず選べるのだが、このように無内容であり、その無内容さも拡散したものである場合、それは非常にたちが悪い。

というわけで、ろばの写真を載せたいと思う。僕はろばを詳しく知らない。だが、みなさんもろばをあんまり知らないと思う。だからろばを載せる。普段、人間はろばにモノやヒトを載せている。なので、今日はろばを載せようと思う。

f:id:onishihitsuji:20190729030255j:plain

ろば

 

のびきった、のびきった……

いま、夜中の三時である。大学生はおおむねこの時期がテストの期間にあたり、僕もまた明日(あるいは今日)にテストを控えた学生である。やれやれ。どうしてこんな作文を書いているんだ? 

(夜が大嫌いという大前提がありながら)夏の夜はまだマシだ。あのこびりつく冷たさが薄いからだろうか。とにかくまだ余裕をもって夜に相対することができる。その余裕を僕は「緊張がのびきったもの」として表現したい。緊張がのびきるなんて、おかしなことだけど、そういう感覚だから仕方がない。緊張はおおむねきついものである。やっぱり緊張があると何をやるにしても体力と時間を使わざるを得ないから……ただ、緊張もやっぱり必要なのである。緊張は辛さだ。僕はピリ辛が好きだ。このように緊張がのびきった夜には、もう完全にあまくなってしまっていて、まるで眠れる気配もない。

前回、詩的な作文だったので、今回は非詩的な作文にしようと考えていた。ただ、これはこれでずいぶん詩的だな。そう思う。結局、僕は文章を書こうと思っては書けないのだ。文章が勝手に書かれるだけであり、僕は夢の中の文章を具体化するコンピュータ・マシンでしかない。

さて。ここでろばのことを考えてみよう。ろば……ろば……みみがあり、あしがあり、ひげがはえている。この時点で、僕とろばとあなたは同じ存在に思える。

 

気の抜けたろば

ついさっき「文章が勝手に書かれるだけ」と言っておいて変な話だけど、僕はそこそこ考えて文章を書いている。ここはこういう言葉がいいな。この繰り返しはちょっとくどすぎるんじゃないかな。この展開はちょっと早すぎるな。そういったふうに考えている。だから作文についても、もちろん考えることはある。とくに文字数のことだ。作文なんて書こうとすればいくらでも(ほんとはいくらでもじゃないけど、便宜的にそうする。便宜的って、便利な言葉だと思う)書けてしまう。だからこそその分量を考えていかなくてはならない。もっとも、考えたところで、けっこう書きすぎてしまうのだけど。

ほんとは☝の文章も、マンゴ・ジェリーの「イン・ザ・サマータイム」を紹介したいだけだった。べつにいらなかったんだ。だけど書いてしまった。やれやれ。まあ、とにかく、ちょっとこれを聴いてみてくださいよ。

 

イン・ザ・サマータイム

youtu.be

 

歌詞も調べてみてください。じつに気が抜けています。

 

人生ってけっこう大変ですよね~。そう思います。いろんなことを考えるんですけど、ずっと考えてるのってやっぱりしんどいです。五十年いろんなことを考え続けて死ぬのなら、何も考えずに五千年生きて死んだ方がまだ楽です。

けっこう大胆な言い方しましたけど、まあつまり何事も適度がいいですよね、ってことです。ピリ辛がいいんです。辛すぎるのはだめで、甘すぎるのもだめです。セイタカアワダチソウも、増えすぎて在来種を駆逐しちゃうのはだめです。だからといって、あのわさわさ感を味わえないというのは寂しいです。

なので、今日はのんきにやりました。こういうのって、いいと思います。そして、そろそろ眠ろうとも思います。空が明るみ始めていて「明日のテストやばいな」と、じわじわ緊張感が効いてきました。いまのところ、勉強はまったくしていません。僕は不勉強なんです。読んでくれていたら、ずいぶん存じ上げていると思いますけど。

さて。最後にろばのことを考えてみましょう。ろば……ろば……

f:id:onishihitsuji:20190729030255j:plain

ろば

それでは。きっとまた会いましょう。どこかのろばの上で。