大西羊『作文集』

作文を書きます。小説も、書くかもしれません。

「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」

スケアリー・モンスターズ」と「タスク」

僕は昔からロックが好きだ。じつはジャズのほうがずっと好きなのだが、今回はロックが好きだということにしておく。そっちのほうが書きやすいからだ。ロックなんてべつに好きじゃないよ、っていう人が「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」について語ってもおもしろくないだろう? そう思うからだ。もちろん好きなことには好きだ。ただ比較されたときにはジャズのほうが好きだというだけだ。多くのものごとにおいてもそうだと思う。鍋の豆腐は(絹がいい)好きだけど、やっぱり牛肉のほうが好きじゃないですか?

 

スケアリー・モンスターズ」と「タスク」を聞いていて思うのは、ふたつがとても似ているということだ。

いや、聞いてくれたらわかると思うんだけど、曲調や内容、メロディや歌詞が似ているというわけではないのだ。それぞれを書いた人ももちろん違っているし、それらが似通った評価を受けたわけでもない。つまり外側のカタチはまったくべつのものなのだ。そこには「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」の山と山がそびえているだけだ。ふたつの山は、山という形式では同じものの、その内実は根本から違ったものだ。「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」、その位置も近くない。とても離れている。間にはみっつかよっつくらいの海がまたがっている。加えて、各々が各々の違った山脈に根ざしている。「スケアリー・モンスターズ」はデヴィッド・ボウイ山脈に、「タスク」はフリートウッド・マック山脈に。そう、確実に同じではないのだ。極めてまったく違っており、隔たりも、非常に大きい。音楽という広々とした世界において近しくあること自体まれだが、ここまでべつなものであることもとてもめずらしい(と僕は思います)。

だけど、それと同時に感じるのだ。それらには重大な共通項がある、と。

 

お聞きになってみませんか?

まあ、僕の話を読むより、まず聞いてみればいいと思う。そして、これは宣伝なんですが、僕はユーチューブ・ミュージックでよく音楽を聞いています。これ、けっこうおすすめです。使いやすいですし、おおむねどんな曲でもありますから。ベニー・グッドマンのオールドなジャズも、シダー・ウォルトンの「ボリヴィア」も、辻井伸行ノクターンも、聞くことができます。もし、そういった音楽アプリを探していらっしゃるのであれば、ぜひ一考してみてください。ただ、キング・クリムゾンはありません。それについては非常に残念です。

 

スケアリー・モンスターズ

youtu.be

 

タスク

youtu.be

 

 

ねえ、とても似てませんか?

 

ポイント・ツー・ポイント

多くの物事はそれぞれに特色を持っている。どれだけ平たく見えるものでもあれ、ひとつ高く優れている一点がある。もちろん僕にもあるし、君にもある。その一点がどれほど高くそびえているかによって、全体の評価も変化する。一点が高ければそこから引っ張られるように全体としても高くなる。逆に高い一点がなければ全体像としても低くならざるをえない。もちろん例外はある。巨大な立方体であり、高い一点なしにすべてが優れている小説もある。だがそれはあくまで例外だ。特別に磨かれた才能が、稀有な一時と出会ったときにのみ生まれるマスター・ピースだ。

スケアリー・モンスターズ」と「タスク」も、他の多くの物事と同じように特別な点、素晴らしい点があるのだ。それはいったいどういう点だろう? ねえ、どういう点だと思いますか?

僕はその点というのが、人の心をあつく揺さぶる点だと感じる。遠くから「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」の声が聞こえてくる。それは次第に僕たちのほうへ、その大きな足で歩いてくる。やがて僕たちの耳にそっと手をあてて語りだす。

「なあ、いっしょにいい気分にならないか?」

その声にはあつい感情がある。独りよがりなものではない。彼らは本当に心の底から言っているのだ。心の底から僕たちといっしょに楽しもうとしているのだ。その言葉の伝え方は「スケアリー・モンスターズ」と「タスク」でまったく違う。彼らは違う言語を話す。別の発音で、他の話し方で。だが、その伝わってくる彼らの言葉の意味は、きっと同じなのだ。僕はふたつを聞いていてそう思う。そう感じる。そう聞こえる。

もちろん僕のこの話は、てんで間違ったものかもしれない。君たちからしたら「いえ、そんなことはないですよ。『スケアリー・モンスターズ』と『タスク』はまったくべつの話ですよ。同じところ、似ているところなんて、どこを探してもないですよ」となるかもしれない。そしてそれが正しいことかもしれない。僕にはどっちが正しいかなんてわからない。どっちも間違っているかもしれない。

ただ、そういった音楽の声を聞くことってすごく重要なことだと思う。物事のポイントを見つけ出すって、とても大事なことだと思う。

ポイント・ツー・ポイント。モノとモノのつながり。それがこの世界を見るために必要な本当の目である。もちろん個人的な考えだけど、それが正しいと思いこんでいる。

だから今日も僕はじっと耳をすませる。彼らが語る声に耳を傾ける。そうやって少しずつ世界を明らかにしていく。

そして、これってけっこう素敵なことなんですよ。