大西羊『作文集』

作文を書きます。小説も、書くかもしれません。

石だらけ

石が好きだ

僕は石が好きだ。ボーちゃんではないが、石が好きだ。

三歳になり、人類としての自覚に目覚めたときから好きだった。それは両手で作れる小さな円の中にも無数にあり、じつに豊富なものだった。園内にあった砂場から北の壁に沿って三角小屋の間を進むと、石で溢れるユートピアがあった。ひっくり返せばダンゴムシがいて、たまにワラジムシもいた。

ちょっと立ち止まり、じっと足元を見つめ、しゃがみこんで、石を手に取る。石をじろじろ眺めてみる。それは右手に少し余る。ごつごつとした肌をしている。褐色や乳糖の色が混じっていて、コーヒーをこぼしたような黒のしみも入り込んでいる。爪を立てるとこちらが痛む。指と爪の間がちくちくとする。ゆっくりと手に力を入れていく。レモンのように爽やかな刺激が走る。そんな僕の態度のそばで、石はまるでさっきと変わっていないように見える。痛みを感じていないのだろうか? 指に覆われて、石は鋭く固定されている。

なんだか、変な話だけど、今日はこれでいい気がしている。なぜだろう? 理由がわからないから、ちょっと困る。ただ、そう感じる。石について少し書いただけなのに、なぜか満足してしまっている。5000書いても、疲労に終わることだってあるのに。まったく不思議だ。

もしかしたら、石が何かメッセージを飛ばしてきているのかもしれない。幼きころの僕がぎゅっと握りしめたごつごつ石が、時空を超えて語りかけているのだ。

「それ以上は書いてはならない。秘密をあばいてはならない」

そう語っている。気がするのだ。

 

石には秘密があるように思う。それは石の中心に内蔵されている。石を掴み、あるいは手をそえ、目をぎゅっとつむって集中すると秘密の鼓動を感じることができる。だが、割ってしまうとそれは空中に逃げ出してしまう。非常にすばしっこい秘密で、一度殻を捨てるとすぐに宇宙に消えていく。

 

音楽のこーなー

youtu.be

 

僕が幼児のとき……ってわけじゃないけど、古くから聞いてる曲のひとつが「ヒット・ザ・ロード・ジャック」だ。

僕はオールドでクラシックなジャズが好きだ。それと同じくらいアール・アンド・ビーが好きだ。

とくに石とこの曲が因縁をもってるってわけじゃないけれど、紹介しておく。すごく好きだから。理由はこれだけだ。でも、理由としてとても十分に思える。石と同じくらい単純でよいと思う。あてつけじゃないよ、ほんとだよ。